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大橋さんを偲んで

さようなら大橋さん アンパンマンと一緒に中国旅行に行きたかった

 大橋さんはお腹の空いた人に自分の顔をちぎって食べさせてくれるアンパンマンのような人でした。丸い顔で口を尖らせて、あわてたように話しだすと、思わず聞き入ったものです。

 面倒なことや力のいる仕事・きりえの運搬など、いつも笑顔でホイホイとやってくれました。きりえの会合に事務所を提供してくれ、専用の引き出しやダンボール箱も作り、郵便物も預かってくれました。絵など描いた事もない主婦らを集め、いつの間にか春の「日中きりえコンクール」への参加、秋の博物館の「きりえ展」の開催を二大行事として定着させてくれました。

「愛知のウーマンパワーといわれているんだよ」とやる気をおこさせ、コンクールの上位入選者が増えるにつれ、満面笑みで表彰式やスライドをやってくれ、お昼にかかったりするとあの狭い台所でうどんをつくり、売り物にならない栗も食べさせてくれました。たまには歌も出て、あの楽しくて美味しかった日々は、30年も続きました。

 一番驚き感動したのは、きりえ展の10回記念画集をつくりたいが資金不足でという時です。「あんた達はお金持ちなんだよ」と名古屋市の文化団体への助成金を積み立てていた通帳を見せてくれたのです。市役所の小中学校の書簡箱へきりえ展のポスターも入れていてくれ、「縁の下の力持ち」ってこういう人のことかと、どれだけ嬉しく感謝したことでしょう。

 その実感は、大橋さんへの信頼になり、中国が好きになり、『合言葉はふるさとへ』を読み、中国映画も観るようになりました。社会への窓を開いてくれ、今きりえがくらしの一部になり、生涯の趣味になったものも大勢います。「お前、本当に日本人か」と言われたアンパンマンと一緒に中国旅行が出来なかったことが心残りです。


「愛知きりえの会」元代表 早瀬ふさこ

  若者たち 早瀬ふさこ作
(ジャワ島ボロブドゥール遺跡)

<2011.3.15>

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