− 県連・支部だより
【10.01.15】金融危機と中国- 『国内の僥倖(ぎょうこう)』の活用
金融危機と中国―『国内の僥倖』の活用 伊藤三朗
かって“北京オリンピック後、中国は崩壊する!”という悪宣伝がなされた。しかし金融危機も乗り切ったし、2009年の世界経済危機の中でも9%近い経済成長を達成、世界の牽引車になっている。それは何故であろうか?
山本一己教授(愛知大学)は、中国が経済発展の三前提、(1)政治的安定(2)開放経済(3)市場メカニズムを満たしていたと認めた上で、幾つかの『国際的僥倖』があったと説く。例えば1980年前後、先進資本主義企業が生産拠点を海外に移転した時期、中国は「改革・開放」で、その要求に適応する環境を提供した。2000年代、アメリカが反テロ一辺倒の外交に進む間隙を縫って、中国は資源外交をアジア、アフリカ、中東、ラテンアメリカに展開した等。そして2008年の金融危機以後は、『国内の僥倖』の活用が叫ばれている。それは “西部大開発”のような内陸部開発のスピードを上げ、外需主導から国内市場への転換を図ろうというものである。
また国費を投じて、米国等先進国との人材・技術の向上に努めている。例えば世界最高水準の蓄電池製造である。環境問題からソーラー等の自然エネルギー活用が進むと、蓄電池の需要が増大する。電気自動車も家電製品並の価格と構造になって、発展途上国まで普及すると見られている。最大利潤を産むのは蓄電池部分だが、使用する稀少金属の産出国が限定されている。中国はその一つという『国内的僥倖』を秘めている。
(僥倖=予想もしなかったような幸運)