− 中国の旅
中国の少数民族を訪ねて
中国の少数民族を訪ねて
私はリュックを背に、中国各地の少数民族を訪ねた。その数40回を超えると思う。はじめての地で、言葉もしゃべれない中、貴重な体験をしてきた。その一部を紹介したい。
雲南省の省都昆明で、早朝、博物館の脇のベンチに座っていると、私の前を中年の女性が買い物袋を提げて通り過ぎて行ったと思ったら、戻って来て、片言の日本語で「あなた日本人ですか?」と尋ねる。「そうです」と答えると、「あなた1人ですか?」「中国語を話せますか?」とたたみかけてくる。そして、「どうして中国語が話せない人が、1人でここにいるのですか?」と問い詰める。私は返事に窮した。
私はペー族の住む大理からの帰りで、飛行機まで時間がかなりあるので、昆明らしいところを見たいと言うと、「大観楼が良いでしょう」と紹介して、バスで行きなさいと教えてくれた。「バス停はどこですか?」と聞くと、すぐそこと言って、一緒に歩き始めた。ところが突然「今日あなたを案内することを許してくれますか?」と思いもしなかったことを口にした。私は一瞬「エッ」と驚きながらもその申し出を快諾した。
彼女の案内で、広い公園内の大観楼を訪ねたあと、彼女の行きつけの昆明名物料理『過橋米線』の店で食事をした。面はお米で、具材も多く、安くて、とても美味しかった。その後、漢方を売る薬屋など珍しい古い街を案内していただいた。
飛行場に行く時間が迫ってきた。タクシーを乗るときに、お礼にお金を渡そうとすると彼女は「私は中国人です!」と2度叫び、受け取りを拒否した。私はお金をもらうためにあなたを案内したのではないと言っているのだと気づいたが、彼女の気分を害したまま、お礼もそこそこに別れざるを得なかった。
その後の旅でも、同じような誇り高き中国の人たちと出会うことになる。
(続く)柳田常樹 上の写真はペー族の女性たち