日中文化交流

中国の旅

広西チアン族自治区

手探りの旅

   私といつもの仲間4人は10月15日〜25日の11日間にわたって広西チアン族自治区の各地を旅してきた。
 ほとんどが行ったことのないところで、誰も中国語が話せず、情報もほとんど持たず、ただ行き先だけははっきりとさせながらの旅だった。どの交通機関でどこまで行くのかは、現地で情報を集めながら決めた。
 どんな旅であったのか、一部を紹介したい。
 はじめに、私たちは左江という川の崖に描かれている岩絵を見に行くことにした。
 その絵は紀元前5〜2世紀にかけてチワン族の祖先が描いたと言われているが、最近の炭素年代の測定によると1万6千年前までさかのぼり、2015年に世界文化遺産に登録されたばかりである。

省都南寧から西に

   まず省都南寧から西に、チアン族の人たちが多く住む崇左市にバスで到着したが、そこでの地図が入手出来ず周辺の情報がつかめない。その上バス、タクシーも見つからない。
 「さて困った。どうしよう」と思っているところに、1人の男性が寄ってきて、180元(約3300円)を出せば車で連れて行くと誘いをかけてきた。そこで、彼の車にのって4人は出発するのだが、30分ほど走ると左江の船着き場で降ろされ、ここから先は船で450元(8100円)かかるという。その上180元を今すぐ払えという。
「冗談じゃない、我々は車で岩絵のところまで案内してくれると思ったから乗ったのに、話が違う」と私が怒り出すと、彼は崇左市まで私たちを送り届けたらお金を受け取ることと、船賃は350元(6300円)に減額してきたので、よく事情が呑み込めないまま船に乗ることにした。
 船は我々4人だけを乗せて、上流に向けてゆっくりと動き出した。操船は老夫婦2人がしていて、時々景観を説明してくれるのだが、全く言葉が分からない。1時間以上経過して、ようやく船が停止した。
 見上げると、垂直になった白い岩肌のあちこちに、人や動物を表した赤い絵が描かれていた。1万年以上前の絵に感動するとともに、どうやってあんな高い絶壁に絵を描いたのか不思議だった。
 現地に来て見て、初めて分かったことは、まだ道路が整備されておらず、船でしかこの光景を見ることができないということだった。
そういう意味ではあの運転手に感謝しなければならないし、また、船の老夫婦の素朴な親切さも加味されて、今日1日とても刺激的で楽しい時をすごしたと感じた。
 思いのほか時間が費やされたので、その日は崇左市のホテルに「有空房?」(空いた部屋がありますか)と尋ねて宿泊することにした。
 翌日はベトナム国境沿いの大きな滝、徳天瀑布を見に行くのだが、そこはどんなところなのか、まったく想像がつかないし、具体的にどうやって行くのかはこれから検討することになる。(つづく)      柳田常樹

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