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チベット族昔話「ドルマとカボチャ」
むかし、ある村にヤンツォンという姉とドルマという妹の二人が住んでいた。
姉は欲ばりで怠け者、妹は働き者で善良だった。両親が死ぬと、姉は命より金が大事な男と結婚し、妹のドルマをいじめて放牧、柴刈り、水汲みなどをさせていた。
ある時、子羊を見失ったため、ドルマは家から追い出されたが、同情した村人に助けられ、家を建て畑を耕し暮らすようになった。
ある日、脚を折った小鳥が落ちて来たので、布で包んで助けてやると、しばらくして小鳥はお礼にカボチャの種をくわえて来てくれた。
その種を畑にまくと、カボチャは大きな岩のように育ち、運べないので刀で真っ二つに切ると、半分に金が、もう半分に銀が詰まっていた。ドルマは大喜びで持って帰り、それからは暮らしが豊かになった。
姉のヤンツォンは妹の変化にびっくりして、家に招いてその訳をすっかり聞いた。そこで、畑に行くと、小鳥が飛んで来たので、待ち切れずに小鳥の脚を折ってから布で包んだやった。
数日後、小鳥はカボチャの種を落としたので、姉が畑にまくと大きなカボチャに育った。姉が刀で切ると、中から白髪の老人が現れ片手に帳簿を持って「わしに借金しておるぞ、今日こそ返せ」と言ったので、ヤンツォン夫婦はびっくりして死んでしまった。
遥か離れたシャングリラの徳欽県にも、日本の昔話「脚折れ雀」とよく似た話が伝えられているのは興味深い。
名古屋学院大教授 西脇 隆夫