− 県連・支部だより
ひと味違う韓国旅行に18人
脈々と受け継がれている近現代史
“ひと味違う日中愛知の旅 2011”と銘打った、県連主催の「日清・日露戦争から見た韓国」旅行が6月16日〜20日に行われ、18人が参加しました。日中友好運動の視野を東アジアに広げようと取り組まれた初めての韓国旅行。一行が訪ねた歴史舞台や印象に残った5日間のスナップ――。
日帝支配の酷さと不屈の独立運動と
仁川国際空港から一歩出ると目に飛び込んでくるのはハングルの洪水。メンバーの多くが初めての訪韓とあって「カルチャーショックだ」「とうとう韓国に来たんだと実感がわくね」などの声が聞かれました。
初日の16日は郷土史学者の黄瑞奎(ファン・ソギュ)氏の案内で、日清両国が最初に戦火を交えた「成歓・牙山の戦い」の地をたどり、忠清南道へ。戦跡は広い河原で、明治政府の朝鮮植民地化の野望の第一歩が打ち砕かれたところでした。
「成歓・牙山の戦い」の説明
韓国の地にて
2日目は専用バスで天安(チョナン)へ。まず訪ねたのは独立記念館です。天安は「韓国のジャンヌ・ダルク」と称される柳寛順(ユ・ガンスン)の故郷でもあり、民族の魂が生きている文化と自然の空間として歴史教育のポイントらしく大勢の小学生が来館していました。
引率の先生に「なんで日本人がここに来ているの」と質問をした子もいたそうです。ガイドによれば、先生は「日本人でも植民地化の歴史を反省して来ている人たちじゃないの」と答えていたとか。
この後、黄海を遠望する丘の上の広大な「国立・望郷の丘」に回りました。日本に強制徴用・徴兵されたまま亡くなった同胞の安葬処です。在日本大韓民国居留民団(民団)の議長など役員の墓が正面最前列に並んでいて、開設にあたって民団の支えが大きかったことをうかがわせます。
天安の独立記念館
東学の継承を
3日目は専用バスで井邑(チョンウプ)へ 移り、韓国近代史の重要な1ページで、独立・民主化運動の源流でもある東学(トンハク)農民革命ゆかりの地を見学しました。
市内の徳川面(ドクチョンミョン)にある立派な東学農民革命記念館で「井邑東学農民革命継承事業会」の李甲祥(イ・コウシャン)副理事長とあいさつ、「こんな遠方までおいでいただき、大変うれしいです」と温かい言葉に迎えられました。
「事業会」は、東学農民革命の中心になった人たちの子孫にあたる人々が、自主的に興し、誇りある故人たちの意志を現在にまで伝えているのです。慰霊碑、全琫準(チョン・ボンジュン)将軍の古宅など李副理事長がつきっきりで案内してくれました。
夕刻、高速鉄道で首都ソウルに移動しました。
東学農民革命継承事業会の代表ら
ソウルは西大門
4日目、ソウルの初日は猛暑の連日で予定を変更し、青瓦台(大統領官邸)の外観をバスから眺めながら朝鮮王宮公園の中の景福宮(キョンボックン)。観光コース定番のスポットですが、日清戦争の起点として重要な朝鮮王宮占領・閔妃(ミンビ)惨殺(1895年10月8日)の歴史の舞台としての重みを感じさせるところです。
次に西大門(ソデムン)刑務所歴史館を訪ねました。蝋人形でリアルに再現されている憲兵や特高警察による政治犯――独立運動家たちへの拷問場面のあれこれ……。
苛烈な植民地支配の暴虐な実態を目の当たりにし、あらためて「日帝36年」「武断政治」の非道さに慄然としました。と同時に、それに勇敢に立ち向かった朝鮮の愛国者たち、そのたたかいの力強さに圧倒される思いを共通にしました。
安重根の事績に
ビビンバのランチをとった後は、ソウル中心部の南、南山(ナムサン)公園の中腹にある安重根(アン・ジュングン)義士記念館です。日本では初代首相の伊藤博文をハルビン駅で射殺したテロリストという扱いですが、韓国ではその名を知らない人はないといわれる殉国の英雄です。
記念館で目を引くのは、旅順の監獄で書かれた安重根の十数本の掛け軸で、処刑される前日に一気に書いたという説明に息を吞みました。また、左手の手形の薬指が小指と同じ長さなのも、血判書を書くために自ら切断したためとされています。
次に、国立中央博物館へ。先史時代から近代20世紀に至る朝鮮半島の歴史を一度に見ることができる博物館で、展示遺物1万1千点、世界第6位の規模を誇っています。短時間の参観ではごく一部分しか見られないのが残念でした。
タプコル公園で
最終日の20日は市内見学でタプコル公園へ。1919年3月1日に起こった朝鮮民族の反日独立運動の舞台としてあまりにも有名な場所です。
公園の中には、三・一独立運動のとき独立宣言書が読まれた八角亭や、ここから始まって韓国全土に広がっていった運動の様子を描いたレリーフ、運動の中心になった人々の銅像や記念碑などがあちこちにあり、韓国人の心の拠りどころともなっていることが分かります。
バスで「江華島事件」の草芝鎮砲台跡に移動して見学の後、帰路の仁川空港に向かいました。辛くても気品のある本場キムチの味そのものだった、心が揺さぶられる韓国旅行でした。
全琫準将軍像の前で
<2011.7.5>