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【08.09..10】京劇「覇王別姫」の一場面

40数年前、中国展で購入したレコードから翻訳

県連版第80号に石川会長が京劇「覇王別姫」の解説をされていました。それを読んでいて、私は中国の文革の頃に名古屋の吹上ホールで開催されていた中国物産展で購入した中国のレコード出版「戯曲選曲京劇」LP版を保存していることを思い出しました。

 第一面は「二進宮」、第二面に「覇王別姫」が録音されており、今では珍しいものだと思います。石川会長の解説と少し重複するところがありますが、10月に来日する京劇団の演目の一つ「覇王別姫」の鑑賞に少しでも役立てればと紹介したいと思います。


                     <strong>翻 訳 会員 古田 弘
   (歌を歌う) 杜 近芳(虞姫)
          遠 世海(項羽)
    伴奏     中国京劇院一団楽隊

項羽  (激高して歌う)どうにもならなかった。 
  今日という日に戦いに敗れて、陣営に戻ってきたが、心が落ち着かない。


虞姫 (歌う)王様 お気持ちを楽になされ、しばらくくつろぎなされませ。


項羽 (歌う)どうしようもできない。敵に幾重にも取り巻かれては勝つことは難しい。

虞姫 (歌う)暫く耐え忍んで陣を守り、援軍がやって来るのを待ちましょう。

項羽 (歌う)どうすることもできないのだ。うま酒でも飲んで、このやりきれない重い気分を解消しよう。

虞姫 (続けて歌う“ゆっくりとした長い拍手”)古来より戦の勝敗は世の常でございます。

項羽 (あくび)ああ。

虞姫 王様  お身体がお疲れになっていらっしゃいます。どうぞ奥の帳にお入りになられてお休みくださいませ。

項羽  そういたそう。一人帳の中に入って休むことにする。妃よ。そなたは警戒を怠らないようにしてくれ。

虞姫  仰せの通りにいたします。王様は張りの中でお酒により眠られました。私は外に出て一度逍遙したくなりました!(“南梆子を歌う)王様は着のみ着のまま穏やかに眠られています。私はここを出て憂さを払いとうなりました。そぞろに歩いて荒れ野原を前に立ち止まり、ふと空を見上げると月の色はさやかに澄み切っています。(馬のいななき)

項羽 ああ 烏騅が長くいなないている。馬丁!

馬童 はあい 参上いたしました。

項羽 烏騅をここに引いてまいれ!

馬童 かしこまりました。

項羽  烏騅よ烏騅!おまえはわしに伴って永年出陣し、戦えば負け知らずの軍馬でよくここまでついてきた。いまや垓下の城内に封じ込まれてしまい、戦う場を失ってしまった。烏騅お前は天下の趨勢を知って離れて行ってしまう。それで張りの前で悲しんで長くいななくのだ。外に連れ出して行け!

虞姫  王様 幸い垓下の地は、小さな山が連なり険しい岩山があり、敵からは攻めにくうございます。機会を待たれて再び囲みを破り、味方の救いをお求めになられても遅くありません!

項羽  それが・・・ああ!

虞姫  私はお酒の支度をいたしました。王様としばらく一献を酌み交わしとうございま      す。

項羽  おおそうか。酒をここにもて!

虞姫  王様 どうぞお注ぎいたします。

項羽  あーあ わしは今自分を振り返ってみるに(歌う)わが威力は山をも動かし、わが気概は世の中を覆い尽くす。だが、時の流れはわしに味方せず、駿馬烏騅は戦場を駆けめぐらない。愛する虞よ、いとしい虞よそちを何としてやればよいのだ!

虞姫  王様 憤り嘆かれて悲しく歌われますので、近臣の者たちが涙をこぼされます。私は一度歌を歌い、舞いをしてこの嘆きをいささかなりとも静めましょう。

項羽  おお妃よ!ごくろうであるぞ!

虞姫  恥を忍んで歌舞をご覧にいれます。(ここで歌う)君王にお酒をおすすめし、虞の歌をお聞かせして苦悶をときましょう。 

 秦の非道に打ち勝って国を破り、英雄戦を起こす。いにしえより常に自分を欺かずといわれ、戦の勝敗、国の攻防は瞬時に決してしまいます。心を広くお持ちになり、お酒を召し上がられ玉座にお掛けになられて、(剣舞“夜深く沈む”の牌子曲)(続けて散板を歌う)ひとまず軍の情報を聞かれませ。
   (了)             

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