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中国の旅

理想郷シャングリラから(1)

 雲南省の西北部に、チベット人の住む地域がある。一九五七年に成立した迪慶(デチン)チベット族自治州である。

その州都は中甸(チョンティン)県建塘鎮に置かれているが、現在ではむしろシャングリラ(香格里拉)の名で知られている。

 シャングリラとは、この地方のチベット語で「心の中の日月」という意味になるといわ
れ、チベット人の心の中では一種の理想境としてとらえられている。

その地勢は北が高く南が低く、梅里雪山、雲嶺雪山山脈と中甸雪山に囲まれ、ランツァン江と金沙江が流れている。周囲には海抜四〇〇〇メートル以上の峰々が百以上もそびえ、この地域の海抜は平均して三三八〇メートルにもなる。

 一年の平均気温が六度とされる中甸の町を長袖シャツ一枚で歩くと、六月初旬とはいえさすがに涼しくて、大通り行くチベット人も漢人もシャツの上に上着を羽織っているほどだ。

 中甸は人口が9万1千人の辺境の小さな方都市であるが、さすがに大理、麗江ほど車は激しくなかった。それでも通りを渡るのに気をつけなければならないほど、けっこう自動車が多い。

 街中を歩く人は多くないが、国家公園の普達錯(プウタアチュオ)は多くの観光客であふれている。そこはさまざまな高山植物が茂り、リスが時たま姿を現し自然の豊かなところである。

 八十年前に、イギリスの作家ジェームス・ヒルトンがこの地方を舞台にして書いた小説「失われた地平線」の世界と、今日のシャングリラが大きく変わっているのは言うでもないだろう。
      (つづく)
 西脇 隆夫・ 名古屋学院大学教授  

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